冷凍野菜内における氷結晶計測法
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テーマ
冷却・冷凍
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研究機関名
日本大学 生物資源科学部 食品開発学科 食品創生分野
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代表者
都 甲洙
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本研究の主旨
冷凍野菜輸入量は約100万tで,主にポテト,えだまめ,コーン,ブロッコリー,ほうれんそうなどがある.野菜は,原料野菜がそのまま冷凍食品に,また,コロッケ,ギョーザ,筑前煮などの調理冷凍食品の原料として使われる. 野菜は水分が80%以上で,凍結により氷結晶になる.冷凍野菜の凍結保存に伴い,氷の再結晶化が進み,サイズの大きな氷結晶は,冷凍食品内部の組織を圧迫・破壊し,品質劣化をもたらす.また,大きく成長した氷結晶は,解凍においてドリップの原因となる.野菜は水分を多く含んでおり,従来の手法による水分分布・氷結晶大きさの計測が困難である.本研究の目的は,冷凍野菜の品質を評価するために,近赤外分光イメージングと冷却近赤外カメラを用い,冷凍野菜内の氷結晶を計測することにある.近赤外カメラは素子の冷却(-5℃)により,暗電流の低減に伴い分光画像の感度が向上した.供試材料は,ジャガイモ,ニンジン,キュウリ,トマトを用いた.図1に液体窒素凍結によるジャガイモ内の氷結晶を示す.デンプン粒,細胞が確認され,細胞の大きさは約100 µmで,氷結晶による細胞壁の圧迫・破壊は見られなかった.凍結保存-20℃の45日は,デンプン粒が氷結晶間に押し出され,また,板状の氷結晶が見られた(図2).これにより,水分を多く含む野菜内の氷結晶計測が可能になった. 従来は,冷凍食品の長期冷凍保存において氷結晶成長を抑制するため,初期凍結と長期凍結保存条件に伴う氷結晶サイズを比較し,冷凍温度を下げるなどの工夫をして来た.このような工夫の定量化には,まず,初期凍結と長期凍結保存中の冷凍野菜内の氷結晶サイズを正確に計測する必要がある.本研究の手法は,冷凍野菜の初期凍結,保存温度,氷結晶成長の相互関係の定量化に応用されると考えられる.