物理的・生化学的な手法による穀物や麹菌の食品化
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テーマ
食品加工
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研究機関名
筑波大学 生命環境系 農産食品加工研究室
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代表者
北村 豊
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本研究の主旨
世界的な食料の不足や畜産に係る諸問題を背景として,機械工学的あるいは培養工学的な手法を活用した新たな食素材の開発が盛んに行われている。ここでは,それぞれ簡便な物理的操作あるいは生化学的操作によって作製される穀物や麹菌を原料とする加工食品について,そのプロセス特性や生産物の物性等を紹介する。 原料を穀物とする加工では,コメやムギ,雑穀やマメを原料として,簡易な短軸押出機による原材料の変性・成形を試み,材料によるデンプンの膨化あるいはタンパクの組織化特性の相違を明らかにした。エクストルーダーよりも安価で構造の単純な押し出し機を活用した研究であり,そのプロセス特性や加工品物性の詳細はこれまで示されていない。なおデンプンの膨化やタンパクの組織化においては,粉末原料に加水しながら行うのが一般的である。これを粒状の原料あるいは粉末の混合物により行い,加工の効率化・省エネ化を促進しようとする点に本研究の新規性がある。 また麹菌は長らく酵素生産を目的として用いられてきたが,菌体自体の食品化はほとんど行われてきていない。幅広い炭素源・窒素源を資化できる特性を生かし,未利用資源のアップサイクルを行える可能性がある。ベンチスケールでの麹菌肉の生産では,酒粕や米糠をはじめとする未利用資源を含む液体培地を用いて麹菌を培養し,回収後に加工を行うことで肉様の食品を得た。特に培地成分と麹菌体の栄養価・物性の関連性を明らかにすることを研究の目的とした。 以上の研究成果は,新規かつ独特な加工技術や製品を普及させるための,これまでにない新たな食品機械やプロセスの開発ニーズを喚起する可能性があると考えている。