Academic Research
攪拌パーツなし攪拌機

攪拌パーツなし攪拌機

  • テーマ

    流動・撹拌

  • 研究機関名

    大阪大学 基礎工学研究科 流体力学グループ(後藤研究室)

  • 代表者

    後藤 晋

  • 本研究の主旨

    攪拌翼等の攪拌パーツを用いず,容器の単純な運動のみを用いた,粉体や液体の新しい攪拌方法を提案します。「混合」は,粉体,液体ともに,食品工業においてとても重要な工程です。一般的には,かき混ぜ棒(攪拌翼)のような攪拌パーツを用いてかき混ぜますが,かき混ぜ棒を用いて試料を混ぜると,かき混ぜ棒付近には強いせん断力が生じ,試料が傷つく恐れがあります。とりわけ,触感が大事な食品を混ぜる際には,特別な注意を払う必要があります。また,かき混ぜ棒は複雑な形状をしていることが多く,付着した試料を洗浄するにはコストがかかりますし,食品ロスにもつながります。したがって,かき混ぜ棒を用いることなく,試料を混ぜることができるのであれば,生産者のみならず,消費者や環境面にとっても,様々なメリットがあるはずです。そこで我々は,【攪拌パーツなしミキサー】を提案します。本手法は,滑らかな容器の単純な運動のみで複雑な流れを駆動し,試料の迅速な混合を実現します。液体,粉体混合技術それぞれに関して,特徴を説明します。
    【液体混合技術】
    図1に示すように,液体試料が水平円管中を流れている際に,その円管を管軸まわりに適当な回転速度で回転させます。すると,図2に示すような,回転軸と垂直な軸を持つ渦列が液相内部に発生し,液体試料の迅速な混合が実現されます。この技術では,配管が液体で完全に充填されていないことが重要です。もし完全に充填されている場合,図2に見られる渦列は発生せず,迅速な混合は実現されません。この技術を応用すれば,液体の移送と同時に,液体の攪拌・混合を行うことが可能です。
    【粉体混合技術】
    図3(左)に示すように,滑らかな球容器を,水平方向に微小振動させながら,鉛直軸まわりにゆっくり回転させます。すると,図4に示すように,容器全域に,粉体の複雑な流れが発生します。その結果,図3(右)に示すように,粉体試料の均一な混合が実現されます。容器の運動を用いた既存の粉体混合機は,鉛直方向に激しく振動させる,もしくは,水平軸まわりに比較的高速に回転させるものが多いですが,本技術は,水平方向の加振振幅は1 mm以下と小さく,鉛直軸まわりの回転速度もわずか1 rpm程度です。したがって,作業者の安全が確保されるほか,混合中の試料の追加や抜き出しも容易です。

図1 (002)  【大阪大学 基礎工学研究科 流体力学グループ(後藤研究室)】

図1 液体攪拌装置概略図

図2 (002)  【大阪大学 基礎工学研究科 流体力学グループ(後藤研究室)】

図2 液相内部に発生する渦例
(上)実験,(下)シミュレーション

図3 (002)  【大阪大学 基礎工学研究科 流体力学グループ(後藤研究室)】

図3 (左)粉体混合機構の概略図
(右)シミュレーションを用いた粉体混合の可視化

図4 (002)  【大阪大学 基礎工学研究科 流体力学グループ(後藤研究室)】

図4 粉体の奇跡の可視化

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