介護食開発に向けた基礎研究とその面白さ
-
テーマ
その他
-
研究機関名
新潟大学 地域連携フードサイエンスセンター
新潟大学 大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 -
代表者
井上 誠
-
本研究の主旨
日本では,平均寿命の延びを反映して高齢者率も伸び続け,2021年には29%を超えた.人口の高齢化や疾患の多様化が進んだことにより,延命のみを目的とするのではなく,どのように生きるかという生活の質(Quality of Life, QOL)を考えることが注視されている.ことに,高齢者の日常生活で最も楽しい時間といわれる「食事」は,豊かな日常生活を送る上では重要な要素である.高齢者では,食べる機能の衰えにより誤嚥や窒息などが原因で亡くなる人の数が多く,安全な食生活は勿論重要であるが,それとともに食を楽しむ人生を考えることも大切である. 食べることを考える上で,食べる側の「ヒト」と食べられる側の「食品」を研究対象として,どのようにすれば「咬みやすく」,「飲み込みやすく」,「誤嚥しにくい」食品ができるか,加えて「食の楽しみを維持できるものか」を知ることが必要である.これまで我々は,高齢者や嚥下困難者がもつ機能低下を正しく把握し,それぞれの症例(障害)に応じた食品学的対応を行うための第一段階として,正常な嚥下動態を定量化したり,食品の物性条件が摂食運動に与える影響,摂食動作に与える個人の機能の違いを調べてきた.近年,FOOMAでの交流を起点として,さまざまな食品企業との共同研究の輪が広がっている. わたしたちの研究が,食品産業における消費者の多様なニーズに対応し,食品技術の向上や発展に寄与できることを願っている.そのキーワードは,咀嚼と認知であるとの視点から,これからの介護食を考えていきたい.