ソフト材料を形にする3Dフードプリンター群
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テーマ
その他
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研究機関名
山形大学 機械システム工学科 ソフト&ウェットマター工学 研究室
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代表者
古川 英光
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本研究の主旨
3Dフードプリンターは、将来的に味、形状、色、食感、栄養素を制御して食品が造形可能になると予想されている。例えば、宇宙食、病院食、介護食における個人に合わせたパーソナライズ食を提供する簡便な調理装置や、低利用食材の活用による食糧問題の解決手法として注目を集めている。3Dフードプリンターは、シリンジやスクリューによるシンプルな材料押出式に加え、材料押出後にレーザーを照射し加熱する後処理工程を設けた装置開発例も報告されており、非常に注目度の高い研究分野の一つである。私たちは2013年頃より3Dフードプリンターに注目し、柔らかい食品を対象として、ブロック積み上げ式やシリンジによる材料押出式、スクリュー押出式、レーザー硬化式などの3Dフードプリンターを開発してきた(図1)。ユーザーが求める食感や食品に呼応するように3Dフードプリンターが多様化する中で、今後各プリンターの適性を把握しそれぞれの装置を使い分ける、もしくは各プリンターを組み合わせるケースが生じると予測される。
例えば、私たちが開発したスクリュー式3Dフードプリンターは、スクリューの回転の速度と方向や先端のノズル径を変えることで、細かい材料の押出が可能である。スクリューの上部は解放されており、造形途中に随時材料を供給可能である。低粘性材料の場合は、材料を押出さない時にスクリューを逆回転させ材料を引き込むことで材料漏れを防ぐ。ユニバーサルフードデザインに則した嚥下食のような柔軟で崩れやすい食品の3D造形に適している。
一方でレーザー硬化式3Dフードプリンターは、食品の前駆体溶液・粉末にレーザーを照射し、そのエネルギーを用いて食品の加熱、凝固などを起こすことで食品を3D造形する(図2)。私たちの知る限り、本方式は、任意の場所にレーザーを走査して調理と3D造形を同時に行う世界初の手法である。①中空やラティス構造と呼ばれる3次元的に入り組んだ造形物の加工が容易であり、②レーザーの照射エネルギーは出力や照射時間によって任意に調整可能であるため照射エネルギー分布、すなわち食感分布をもつ食品の3D造形が可能である、などの利点を有する。
本研究では、それらの3Dフードプリンターを俯瞰しつつ、特にスクリュー式やレーザー硬化式の3Dフードプリンターを取り上げ、それぞれの3Dプリンターに適する材料特性やそれぞれのターゲットとする3D食品について報告する。